大佐の研究所

元理系院生、現在会社員の男が運営する雑記ブログ。理科系の内容、就活、投資、旅行など多岐にわたる

感電死に関する研究

 

1.はじめに

人は何Vで死に至るのだろうか?

今日はそんな疑問にこのバナナレポートが回答したい。

実は、感電死に至る場合、重要なのは電圧ではなく電流なのだ。

 一般的には

■ 0~0.5mA電流を感知できない

■ 0.5~5mAビリビリと痙攣を起こさない程度で、指や腕などに痛みを感じる

■ 5~30mA痙攣を起こし、接触状態から離れることが困難になる。呼吸困難や血圧上昇が起こる

■ 30~50mA強い痙攣を起こし、失神や血圧上昇をまねく。長時間の感電は死亡するケースもある。

■ 50mA以上強烈なショックを受け、心臓停止や火傷により死亡する可能性が極めて高くなる。

といった感じで危険度が記されている。100mAに至ると即死ラインとみてよさそうだ。

サイト主は電検取得・ビル設備管理者であるらしいのでこの基準の信憑性は高い。

 

もう少し詳細なデータを見てみよう。労働安全衛生総合研究所が2009年にまとめたデータ(http://www.jniosh.go.jp/publication/doc/td/SD-No25.pdfより引用)によれば以下のような表がある。

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これは、左手から両足へと電流が流れた場合を想定している。また、15-100Hzの交流電流のケースである。AC-1は無反応、AC-2は有害反応、AC-3は筋肉の痙攣・呼吸困難を引き起こす。AC-4-1は心室細動による心停止の恐れが5%以下に、AC-4-2は50%以下、AC-4-3は50%以上である。

電流値のみでなく、作用する時間にも依存するが、死の危険があるのはAC-4-1、すなわち50mAからであるといえる。1500mAから始まるAC4-3は即死ラインとみてよいだろう。つまり、50mAで危険、1500mAで即死というわけだ。

なお、直流の場合若干危険度は下がるらしく、傾向としては上図と同様だが、危険ラインが200mAとやや高めになっている。しかし、即死ラインは相変わらず1.5Aである。

 

いずれにせよ、50mA以上は危険であると認識すべきである。即死ラインでないからといって50mA程度から筋収縮によって筋肉が硬直して電源から直ちに離れることができず長時間電流にさらされて死に至ることもあり得る。安全率を2として25mA以上には近づくべきではない。

 

さて、次に考慮すべきは抵抗だ。人体の抵抗は状況によってかなり変動する。まず、乾燥しているか、汗で湿っているか。人体の抵抗は皮膚抵抗+内部抵抗で構成され、皮膚抵抗が極めて大きい。それもそのはず、人体の内部はほとんど水で構成されている(人体の80%は水分である)ため内部は電気を通しやすい。内部抵抗は上記の報告書によれば500Ω程度にすぎない。

また、印加電圧によって人体の抵抗は変動する。次の表を見てもらいたい。

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 これは、接触電圧と人体抵抗値の関係である(両手と両足間の抵抗値と想定されている)。接触電圧が上昇することによって抵抗値は減少している。しかも急激な減少だ。交流の場合についてこれをExcelを用いてグラフ化すると以下のようになる。

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 近似曲線を追加すると、{y=7537.9x^{-0.286}}のような指数関数となっており、接触電圧が上昇すると急激に抵抗値は減少し、そののちは緩やかに減少する。さて、肝心の電流値だが、電流値をI(A)としてオームの法則よりX=IYと表せるので、{I=1.3*10^(-4) x^{1.286}}という関数で書ける。指数が1に近いためほぼ線形関数となる。これを描画すると次のようになる。

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計算によれば、危険ラインである0.05Aには102Vで達する。また、即死ラインの1.5Aには1446Vで達する。

また、汗をかいている場合、皮膚抵抗がほぼ0となり、抵抗値は500Ω程度。この場合、危険ラインには25Vで、即死ラインには750Vで達成してしまう。

 

50Hz100Vの関東の家庭用コンセントだと危険ラインであり、1秒以上の接触は死につながる。水に濡れている手の場合、200mAもの電流が流れ、1秒の接触で即死ラインに達する。極めて危険である。

その他、乾電池であれば1.5Vであるため何の問題もない。直流の場合、危険ラインが0.2Aなので300V程度で危険に達する。乾電池200個分を直列でつなぐ必要がある。水で濡れ手であれば100V、すなわち66個で済む。

つまり、計算によれば乾燥した手ならば乾電池100個直列でも死にはしないといえる。是非、試してみたいがなかなか勇気が出ないところだ。

 

以上を総括すると、

・乾燥した状態であれば約100V(即死は1400V)で死の危険が伴う。

・湿っている場合、約25V(即死は750V)で死の危険が迫る。

安全的には10Vを超える電圧を持つ物体には近づかないことが望まれる。

 

なお、身近な例では静電気は10kV程度の電気が発生しているようだが、放電時間がusレベルであるため、大事には至らない。

また、雷はMV級の電圧が作用するが、継続時間は100us未満、立ち上がりが1.2us、立ち上がりが50us程度となっている。このような電圧は雷インパルス電圧と呼ばれる。通電時間が短いため、状況によっては電気が他所へ逃げる、通電時間が短い、などの要因によって助かることも稀にある。

ポケモンピカチュウの十万ボルトであったとしても、静電気並みに通電時間が短ければそれほど大事には至らない。しかし、アニメで見ている限りサトシやロケット団が浴びている時間は3-4秒である。さすがにこれは厳しい。3-4秒なら50mA, すなわち100Vでも死に至る可能性がある。よほど耐電性の服でも装着しているのか、はたまた電気が空中を進むため減衰しているのか、真実は不明である。